サムエル記下 13章

2 Samuel 章 13
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39節
14章
1

その後のことである。ダビデの子アブサロムに、タマルという名の美しい妹がいた。ダビデの子アムノンは彼女に恋をした。

2

アムノンは、妹タマルのゆえに苦しんで、病気になるほどであった。というのは、彼女が処女であって、アムノンには、彼女に何かをするということはとてもできないと思われたからである。

3

アムノンには、ダビデの兄弟シムアの息子でヨナダブという名の友人がいた。ヨナダブは非常に知恵のある男であった。

4

彼はアムノンに言った。「王子様。なぜ、朝ごとにやつれていかれるのですか、そのわけを話してください。」アムノンは彼に言った。「私は、兄弟アブサロムの妹タマルを愛している。」

5

ヨナダブは彼に言った。「床に伏せて、病気のふりをなさってください。父君が見舞いに来られたら、こう言うのです。『どうか、妹のタマルをよこして、私に食事をとらせるようにしてください。彼女が私の目の前で食事を作って、私はそれを見守り、彼女の手から食べたいのです。』」

6

アムノンは床につき、仮病を使った。王が見舞いに来ると、アムノンは王に言った。「どうか、妹のタマルをよこし、目の前で団子を二つ作らせてください。私は彼女の手から食べたいのです。」

7

ダビデは、タマルの家に人を遣わして言った。「兄さんのアムノンの家に行って、病人食を作ってあげなさい。」

8

タマルが兄アムノンの家に行ったところ、彼は床についていた。彼女は生地を取ってそれをこね、彼の目の前で団子を作ってそれをゆでた。

9

彼女は鍋を取り、それを彼の前によそったが、彼は食べることを拒んだ。アムノンが「皆の者をここから出て行かせよ」と言ったので、みなアムノンのところから出て行った。

10

アムノンはタマルに言った。「食事を寝室に持って来ておくれ。私はおまえの手からそれを食べたい。」タマルは、自分が作ったゆでた団子を兄のアムノンの寝室に持って来た。

11

彼女が食べさせようとして、彼に近づくと、彼は彼女を捕まえて言った。「妹よ、おいで。私と寝よう。」

12

彼女は言った。「いけません。兄上。乱暴してはいけません。イスラエルでは、こんなことはしません。こんな愚かなことをしないでください。

13

私は、この汚名をどこに持って行けるでしょうか。あなたも、イスラエルで愚か者のようになるのです。今、王に話してください。きっと、王は私があなたに会うのを拒まないでしょう。」

14

しかし、アムノンは彼女の言うことを聞こうともせず、力ずくで彼女を辱めて、彼女と寝た。

15

アムノンは、激しい憎しみにかられて、彼女を嫌った。その憎しみは、彼が抱いた恋よりも大きかった。アムノンは彼女に言った。「起きて、出て行け。」

16

タマルは言った。「それはなりません。私を追い出すなど、あなたが私にしたあのことより、なおいっそう悪いことですから。」しかし、アムノンは彼女の言うことを聞こうともせず、

17

召使いの若い者を呼んで言った。「この女をここから外に追い出して、戸を閉めてくれ。」

18

彼女は、あや織りの長服を着ていた。昔、処女である王女たちはそのような身なりをしていたのである。召使いは彼女を外に追い出し、こうして戸を閉めてしまった。

19

タマルは頭に灰をかぶり、身に着けていたあや織りの長服を引き裂き、手を頭に置いて、泣き叫びながら歩いて行った。

20

彼女の兄アブサロムは彼女に言った。「おまえの兄アムノンが、おまえと一緒にいたのか。妹よ、今は黙っていなさい。彼はおまえの兄なのだ。このことで心配しなくてもよい。」タマルは、兄アブサロムの家で、一人わびしく暮らしていた。

21

ダビデ王は、事の一部始終を聞いて激しく怒った。

22

アブサロムはアムノンに、このことが良いとも悪いとも何も言わなかった。アブサロムは、アムノンが妹タマルを辱めたことで、彼を憎んでいたからである。

23

満二年たって、アブサロムがエフライムの近くのバアル・ハツォルで羊の毛の刈り取りの祝いをしたとき、アブサロムは王の息子たち全員を招いた。

24

アブサロムは王のもとに行き、こう言った。「ご覧ください。このしもべは羊の毛の刈り取りの祝いをすることにしました。どうか、王も家来たちも、このしもべと一緒においでください。」

25

王はアブサロムに言った。「いや、わが子よ。われわれ全員が行くのは良くない。あなたの重荷になってもいけないから。」アブサロムは、しきりに勧めたが、ダビデは行きたがらず、ただ彼に祝福を与えた。

26

アブサロムは言った。「それなら、どうか、私の兄アムノンを私どもと一緒に行かせてください。」王は彼に言った。「なぜ、彼があなたと一緒に行かなければならないのか。」

27

アブサロムがしきりに勧めたので、王はアムノンと王の息子たち全員を彼と一緒に行かせた。

28

アブサロムは、自分に仕える若い者たちに命じて言った。「よく注意して、アムノンが酔って上機嫌になったとき、私が『アムノンを討て』と言ったら、彼を殺せ。恐れてはならない。この私が命じるのではないか。強くあれ。力ある者となれ。」

29

アブサロムの若い者たちは、アブサロムが命じたとおりにアムノンにした。王の息子たちはみな立ち上がって、それぞれ自分のらばに乗って逃げた。

30

彼らがまだ道の途中にいたとき、ダビデのところに、「アブサロムは王のご子息たちを全員殺しました。残された方は一人もいらっしゃいません」という知らせが届いた。

31

王は立ち上がり、衣を引き裂き、地に伏した。傍らに立っていた家来たちもみな、衣を引き裂いた。

32

ダビデの兄弟シムアの子ヨナダブは、証言をして言った。「王様。彼らが王のご子息である若者たちを全員殺したとお思いになりませんように。アムノンだけが死んだのです。それはアブサロムの命令によるもので、アムノンが妹のタマルを辱めた日から、胸に抱いていたことです。

33

今、王様。王子たち全員が殺された、という知らせを心に留めないでください。アムノンだけが死んだのです。」

34

アブサロムは逃げた。見張りの若者が目を上げて見ると、見よ、うしろの山沿いの道から大勢の人々がやって来るところであった。

35

ヨナダブは王に言った。「ご覧ください。王子たちが来られます。このしもべが申し上げたとおりになりました。」

36

彼が語り終えたとき、見よ、王子たちが来て、声をあげて泣いた。王もその家来たちもみな、非常に激しく泣いた。

37

アブサロムは、ゲシュルの王アミフデの子タルマイのところに逃げた。ダビデは、毎日アムノンの死を嘆き悲しんでいた。

38

アブサロムは、ゲシュルに逃げて行き、三年の間そこにいた。

39

アブサロムのところに向かって出て行きたいという、ダビデ王の願いはなくなった。アムノンが死んだことについて慰めを得たからである。